睡眠時無呼吸症候群が引き起こす健康への影響

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は単なる睡眠の問題ではなく、全身の健康に深刻な影響を与える疾患です。睡眠中の慢性的な酸素不足は心臓、脳、血管、免疫系など、体のあらゆる臓器にダメージを与えます。重要なのはこれらの健康リスクがお互いを悪化させ合う悪循環に陥りやすいことです。
早期発見・治療の重要性
睡眠時無呼吸症候群が重症になるほど、高血圧や糖尿病などとの合併が多く見られます。軽度であっても長期間放置されれば合併のリスクは高まります。
文京区本駒込の本駒込耳鼻咽喉科では、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある患者さんに対し、全身の健康リスクを考慮した診療を行っています。大きないびきや日中の強い眠気など、気になる症状がある場合は早めにご相談ください。
心血管系への影響
突然死のリスク増加
睡眠時無呼吸症候群では睡眠中の心疾患による突然死のリスクが増加します。重症の睡眠時無呼吸症候群では夜間から早朝にかけて心停止や重篤な不整脈が起こりやすく、特に高齢者では注意が必要です。
心筋梗塞と脳卒中
長期の睡眠時無呼吸症候群は、発症自体が命に関わる心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)のリスクを増大させます。働き盛りの年代でも発症する可能性があり、仮に命を取り留めても、後遺症によって社会復帰に大きな影響を与えます。
高血圧の発症と悪化
睡眠時無呼吸症候群により高血圧の発症リスクが増加すると、既存の高血圧も悪化しやすくなります。特に早朝高血圧や夜間高血圧、薬が効きにくい治療拮抗性高血圧など、通常の血圧測定では発見しにくいタイプの高血圧が多く見られます。
認知機能への影響
認知症発症リスクの増加
睡眠時無呼吸症候群により、認知症の発症リスクが増加することが明らかになっています。慢性的な酸素不足により脳の神経細胞が障害を受け、記憶を司る海馬の萎縮が進行するからです。特に高齢者ではこの影響が顕著に現れる傾向があります。
日中の認知機能低下
集中力の低下、記憶力の減退、判断力の鈍化などにより、仕事や日常生活に支障をきたします。運転中の居眠りによる交通事故のリスクも上昇します。
学習・作業能力への影響
睡眠の質の低下により、新しい情報の学習や記憶の定着が困難になります。これにより、仕事の効率低下や学習能力の減退が生じ、長期的にキャリアや生活に大きな影響を与える可能性があります。
免疫機能とホルモンバランスへの影響
免疫力の低下
慢性的な睡眠不足により免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。また、がんの発症リスクも増加する可能性があり、特に呼吸器系や消化器系のがんとの関連が指摘されています。
成長ホルモンの分泌障害
成長ホルモンは深い睡眠中に分泌されるため、睡眠時無呼吸症候群ではその分泌が減少します。小児では成長・発育不良へ、成人では筋肉量の減少や骨密度の低下、皮膚の老化などへつながります。
性ホルモンへの影響
男性では男性ホルモン(テストステロン)の分泌が低下し、性機能障害や筋力低下を引き起こします。女性では月経不順や更年期症状の悪化が見られることがあります。
代謝系への影響
糖尿病のリスク増加
睡眠時無呼吸症候群による慢性的な酸素不足は、血糖値を一定に保つホルモン(インスリン)の働きを悪くし、血糖コントロールを困難にします。糖尿病(Ⅱ型糖尿病)の発症リスク上昇に加え、既存の糖尿病の病態悪化にもつながります。
肥満の促進
食欲を調節するホルモンバランスが崩れ、体重増加を招きます。また、日中の眠気により活動量が減少し、さらなる肥満を引き起こす悪循環が形成されます。
脂質代謝の異常
コレステロール値や中性脂肪値の上昇により、動脈硬化が進行しやすくなります。動脈硬化の進行は全身の臓器に悪影響を及ぼし、将来的な心血管疾患のリスクをさらに増加させます。