肥満がいびきを引き起こす仕組み

体重が増加すると、首まわりや舌、喉の周辺に脂肪が蓄積します。蓄積した脂肪は気道を外側から圧迫し、空気の通り道を狭くしてしまいます。狭くなった気道を空気が通る際、周囲の組織が振動しやすくなり、これがいびきの音として現れます。特に仰向けで寝る際は重力により舌や軟口蓋(口の奥の柔らかい部分)が沈下しやすくなるため、気道狭窄がさらに悪化し、いびきが大きくなりやすいです。
肥満の基準
肥満はBMI(Body Mass Index)で示されます。BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で算出され、一般的に25以上が肥満に該当します。BMIの数値が増加するほどいびきが起こりやすく、睡眠時無呼吸症候群のリスクも高くなります。
なお、日本人は欧米人と比べて顎が小さく、首が短い傾向にあります。軽度の体重増加でも気道への影響が現れやすいので注意が必要です。
| 診断 | BMI |
|---|---|
| 低体重 | 18.5未満 |
| 普通体重 | 18.5以上25未満 |
| 肥満(1度) | 25以上30未満 |
| 肥満(2度) | 30以上35未満 |
| 肥満(3度) | 35以上40未満 |
| 肥満(4度) | 40以上 |
※日本肥満学会「肥満度分類」をもとに作成
注意すべき危険なサイン
大きないびき、睡眠時の呼吸停止
仰向けで寝た時にいびきが特に悪化する場合や、いびきの途中で10秒以上呼吸が止まるような状態は、単なるいびきを超えて睡眠時無呼吸症候群に該当する可能性があります。ご家族から「息が止まっている」と指摘された場合は、早急な検査が必要です。
日中の強い眠気、起床時の頭痛・倦怠感
十分な睡眠時間をとっているにもかかわらず、日中に強い眠気を感じる、会議中や運転中に居眠りしてしまう、集中力が続かないといった症状は、夜間の睡眠の質が低下しているサインです。朝起きた時の頭痛や倦怠感も重要な指標となります。
既存疾患への影響
血圧が上昇傾向にある、夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)といった症状も、肥満に関連した睡眠障害のサインです。特に糖尿病をお持ちの患者さんの場合、肥満によるいびきが血糖コントロールの悪化を招くことがあります。
肥満によるいびきが引き起こす健康リスク
睡眠の質の低下
いびきの音刺激が脳に伝わり、気道が狭くなることで酸素量が低下し、睡眠中も脳が十分休めません。中途覚醒が頻発し、十分な睡眠時間を確保しても日中に強い眠気に襲われる状態は危険なサインです。
心疾患・脳卒中リスクの増加
肥満によるいびきを放置すると睡眠中に十分な酸素を取り込めなくなり、身体は慢性的な低酸素状態になります。低酸素状態では交感神経が過剰に活性化して血管に大きな負担をかけるため、将来的な心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患の発症リスクが増加します。
肥満のさらなる悪化
体重増加が睡眠の質を悪化させ、睡眠不足がホルモンバランスの乱れを通じてさらなる体重増加を招くという悪循環に陥りやすくなります。
家族への影響
大きないびきは同居するご家族の睡眠も妨げ、家族全体の健康とQOL(生活の質)に影響を与えます。パートナーの睡眠不足や関係性の悪化を防ぐためにも、早期の治療が重要です。
専門的なサポートで健康な睡眠を

肥満によるいびきは、適切な治療で改善できる症状です。文京区本駒込の本駒込耳鼻咽喉科では、患者さんの状態に応じた治療をご提案いたします。まずはいびきの原因を正確に診断することが重要ですので、いびきでお悩みの際は当院へお気軽にご相談ください。