更年期と睡眠時無呼吸症候群の関係

更年期(45歳〜55歳前後)を迎えた女性の心身には、女性ホルモンの分泌低下によって様々な不調が現れます(更年期障害)。睡眠障害もそのうちの一つで、深い睡眠を得にくくなることで呼吸リズムが不安定になりがちです。
事実、女性の睡眠時無呼吸症候群(SAS)は50~60歳代での発症が多く見られます。適切な検査をせずに更年期障害としてまとめてしまうと、症状が一向に改善しないばかりか、睡眠時無呼吸症候群による健康リスクを高めてしまいます。
更年期による睡眠時無呼吸症候群のメカニズム
エストロゲンの低下による気道の閉塞
気道周辺の筋肉を支える力が低下すると、睡眠中に気道が閉塞しやすくなります。エストロゲン(女性ホルモンの一種)は気道の筋肉を支える重要な役割を担っており、更年期で急激に減少することで、睡眠時無呼吸症候群を起こしやすくなります。
脂肪分布の変化
更年期には脂肪の分布も変化し、内臓脂肪が増加するとともに首まわりにも脂肪が蓄積しやすくなります。首まわりに脂肪が蓄積すると気道圧迫のリスクが高まるため、この時期の体重管理は特に重要です。
女性特有の症状
睡眠時無呼吸症候群の典型的な症状はいびきや日中の眠気です。しかし、女性の場合はそれらに加えて以下のような症状も見られます。
身体的な症状
動悸や息切れ、夜間の発汗、ホットフラッシュの悪化などが現れることがあります。これらの症状は更年期障害の一般的な症状と重複するため、睡眠時無呼吸症候群が原因であることが見逃されやすいです。
精神的な症状
抑うつ傾向、不安感の増強、イライラ感などの精神症状が強く現れることがあります。朝起きた時の頭痛や倦怠感、集中力の低下なども、更年期症状として片付けられてしまうことが多いのが現状です。
誤診されやすいパターン
上記の症状により「更年期障害」や「うつ病」と診断され、適切な睡眠検査が行われないまま数年が経過するケースが珍しくありません。診断が遅れている間に症状が悪化し、合併症のリスクが高まってしまいます。
診断のポイント
問診
月経歴やホルモン治療の既往、更年期症状の詳細な確認を行い、症状の背景にあるホルモンバランスの変化を評価します。
気道の状態評価
鼻腔から咽頭まで気道全体の状態を内視鏡で詳しく観察します。更年期のホルモン変化により鼻粘膜の乾燥が生じやすくなり(ドライノーズ)、これがいびきの一因となることがあります。また、扁桃腺の状態や舌の大きさなどの解剖学的特徴を評価し、患者さんに適した治療方針を決定します。
睡眠検査
頭部のバランスや体格に合わせた検査機器の調整が重要です。検査はご自宅で行える簡易検査から段階的に始め、より詳細な分析が必要な場合には、提携先病院での精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査:PSG)をご案内いたします。
女性の健康を総合サポート

文京区本駒込の本駒込耳鼻咽喉科では、女性特有の症状や体格的特徴を理解し、患者さん一人ひとりに最適化した治療をご提供いたします。更年期の様々な症状でお悩みの方は、睡眠の質についても一度ご相談ください。
なお、更年期以外にも妊娠による体重増加やホルモンバランスの乱れ、婦人科疾患(多嚢胞性卵巣症候群など)でも睡眠時無呼吸症候群が起こることもあります。若い方でも疑わしい症状がある場合は、放置せずに受診しましょう。