アレルギー性鼻炎が睡眠に与える影響

アレルギー性鼻炎と睡眠時無呼吸症候群(SAS)には密接な関係があります。鼻炎による鼻づまりで口呼吸が習慣化すると、舌や軟口蓋(口の奥の柔らかい部分)が沈下しやすくなり、気道が狭くなって睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。また、鼻粘膜の腫れが直接的に上気道を狭窄させ、呼吸抵抗を増加させることも重要な要因です。
アレルギー性鼻炎の有無は睡眠時無呼吸症候群の治療方針にも影響しますので、初診時には必ず鼻炎の有無を確認し、鼻の通り(鼻腔通気性)の詳細な評価を行っています。両者の関係を理解することが、効果的な治療戦略の立案に欠かせません。
鼻づまりによる睡眠への影響
呼吸パターンの変化
鼻づまりにより鼻呼吸が困難になると、自然に口呼吸に移行します。口呼吸では舌の位置が下がり、気道の最も狭い部分である咽頭部での閉塞が起こりやすくなります。また、口呼吸は鼻呼吸と比べて呼吸効率が悪く、同じ酸素量を得るためにより深い呼吸が必要となり、睡眠中の呼吸リズムが不安定になります。
睡眠の質の低下
鼻づまりによる呼吸困難は、睡眠中の頻繁な覚醒を引き起こします。患者さんご本人は覚醒を自覚しないことが多いのですが、深い睡眠が得られず、朝起きた時の倦怠感や日中の眠気として症状が現れます。
CPAPへの影響
鼻づまりはCPAP(シーパップ)の使用の最大の障害となります。十分な治療効果を発揮できないだけでなく、鼻マスクからの空気圧により鼻づまりが悪化し、治療継続が困難になることもあります。
アレルギー性鼻炎の診断
客観的な鼻腔評価
詳細な検査によってアレルギー性鼻炎による鼻づまりの程度を評価し、睡眠時無呼吸症候群への影響を正確に把握します。
内視鏡による詳細観察
内視鏡(ファイバースコープ)を使い、鼻中隔弯曲症、鼻茸、下鼻甲介の腫脹など、アレルギー以外の鼻づまりの原因も詳しく観察します。アレルギー性鼻炎と構造的な問題が併存している場合は、それぞれに対する適切な治療戦略を立案します。
アレルゲンの特定
アレルギー検査(血液検査)により、原因となるアレルゲンを特定し、環境整備や薬物治療の方針を決定します。
小さなお子さんなど、通常の採血が難しい方には「ドロップスクリーン」による検査も可能です。指先からのわずかな採血で、スギ、ヒノキ、ダニ、ハウスダストなどの主要なアレルゲン41種類を調べられます。
睡眠時無呼吸症候群の治療のための鼻炎管理
鼻炎治療の優先順位
当院では睡眠時無呼吸症候群の治療において、鼻づまりの改善を最優先に考えています。CPAPを開始する前に、まず鼻腔通気性を改善することで、CPAP使用時の快適性が向上し、治療の継続率の改善につながります。
薬物治療の最適化
アレルギー性鼻炎に対する薬物治療では、内服薬や点鼻薬などを患者さんの症状の程度と生活スタイルに応じて組み合わせます。眠気を引き起こしにくい薬剤の選択や、点鼻薬の正しい使用方法の指導も重要な要素です。
手術治療の検討
薬物治療で十分な改善が得られない場合は手術も検討します。鼻中隔矯正術、下鼻甲介切除術、鼻茸摘出術などにより、鼻の通りを根本的に改善することで、睡眠時無呼吸症候群の症状改善も期待できます。
専門的で総合的な治療を

アレルギー性鼻炎と睡眠時無呼吸症候群の関係は複雑ですが、耳鼻咽喉科の専門的な診療により適切な評価と治療が可能です。鼻づまりでお困りの方、睡眠の質でお悩みの方は、両方の症状を総合的に評価できる文京区本駒込の本駒込耳鼻咽喉科にご相談ください。