マウスピース療法とは？
マウスピース療法は睡眠時無呼吸症候群の治療の一つで、就寝時に専用のマウスピース（口腔内装置：OA）を装着する治療方法です。マウスピースは下顎を前方に移動させることで舌の付け根部分を前に押し出し、気道を広げて維持する働きをします。
治療の原理
睡眠時無呼吸症候群の多くは、舌や軟口蓋（口の奥の柔らかい部分）が重力により下がることで気道が狭くなることが原因です。マウスピースにより下顎を前方に固定することで、これらの組織が下がることを防ぎ、気道の閉塞を予防します。まるで気道に支柱を入れるような効果があると考えていただければわかりやすいでしょう。
CPAPとの違い
CPAPが空気圧で気道を押し広げるのに対し、マウスピース療法は物理的に顎の位置を変えることで気道を確保します。電源が不要で、旅行時などでも気軽に使用できるのが大きな特徴です。睡眠時無呼吸症候群の症状や原因に応じた使い分けが重要なので、それぞれの適応は慎重に判断します。
マウスピース療法の適応となる患者さん
重症度による判断
マウスピース療法は、主に軽症から中等症の睡眠時無呼吸症候群に対して効果的です。重症例でもCPAPが困難な場合には使用を検討します。
症状とライフスタイルによる判断
出張が多い、マスクに対する強い拒否感がある、鼻づまりが重度などの理由でCPAPが継続できない患者さんにとって、マウスピース療法は有効な代替治療となります。
適応のための歯科的な条件
マウスピース療法を行うためには、上下の歯が十分に残っている、重度の歯周病がない、顎関節に問題がないなどの歯科的条件を満たす必要があります。これらの条件については、提携歯科医院で事前に詳細な検査を行います。
期待できる効果
いびきの改善
マウスピース使用により、使用初日からいびきが改善されることが多いです。パートナーの睡眠の質の向上にもつながり、ご家族全体のQOL（生活の質）の改善が期待できます。
無呼吸の改善
適切に調整されたマウスピースにより、高い確率で無呼吸改善効果が期待できます。完全にゼロにすることは困難な場合もありますが、有意な改善により症状の軽減が期待できます。
日中症状の改善
睡眠の質の改善により、日中の眠気、疲労感、集中力低下などの症状も改善が期待できます。ただし、重症例では完全な改善は困難な場合があり、他の治療方法の併用や変更を検討することもあります。
治療の流れ
Step01
患者さんへの説明
まずはマウスピース療法の仕組み、期待される効果、他の治療方法との比較などについて、十分に理解していただけるよう丁寧にご説明します。
Step02
適応判断と歯科紹介
気道の閉塞部位、重症度、患者さんのご希望などを総合的に評価します。マウスピース療法が有効と判断した場合は、睡眠時無呼吸症候群の治療に精通した連携歯科医院をご紹介します。
Step03
口腔内検査、マウスピースの型取り
歯科医院ではまず口腔内が清潔に保たれているかを検査し、必要に応じてクリーニングを行った上で、マウスピースの型を採ります。
Step04
仮マウスピースの調整
仮のマウスピースが完成したら、上顎・下顎それぞれに装着し調整を行います。装着感や噛み合わせを確認しながら調整し、適合が良くない場合は再度型採りを行って作製し直します。
Step05
装着時の顎位置の決定
気道を確保しつつ、睡眠時にストレスのない位置に下顎がくるように調整します。違和感が大きいと睡眠の質に影響するため、十分に確認します。
Step06
上下マウスピースの接着・完成
マウスピース装着時の顎の位置が決まったら、上下のマウスピースを接着し完成です。装着すると自然に気道を確保でき、呼吸がしやすくなります。
Step07
使用開始と経過観察
毎日睡眠時にマウスピースを装着し、約一週間後に再度来院していただきます。装着感や口腔内への悪影響がないかを確認し、違和感や痛みがある場合は再度作製し直すこともあります。
既にマウスピース療法を受けている方へ
現在マウスピース療法を受けているにも関わらず、十分な効果が得られていない場合は、鼻づまりや扁桃腺の肥大など、他の要因が関与している可能性があります。また、マウスピースの調整不足や、病状の進行により重症化している場合もあります。マウスピース療法の効果に満足されていない方は、専門医による再評価をおすすめします。その際は、耳鼻咽喉科専門医のいる文京区本駒込の本駒込耳鼻咽喉科へお気軽にご相談ください。
